障害福祉サービスの処遇改善加算は、令和8年6月から対象者が広がり、上乗せの区分もできました。加算額が増えた事業所も多いと思います。
その一方で、「計画書は出したけど、年度の途中で何をしたらいいかわからない」「実績報告の時期になって、あわてて集計する」ということも起こりがちです。
この記事では、処遇改善加算の年度中の管理に絞って、AIで管理すると楽になるところと、あらた社会保険労務士オフィスでのやり方をご紹介します。
結論:処遇改善加算は「毎月の記録」で決まる
処遇改善加算は、計画書 → 毎月の記録 → 実績報告の1年サイクルです。実績報告を年度末にまとめて作ろうとすると大変ですが、毎月の記録があれば、ほぼ転記で終わります。
そして、この「毎月の記録」こそ、AIと相性のいい作業です。
令和8年度、何が変わった?(おさらい)
- 対象者が広がった:福祉・介護職員だけでなく、事務員や調理員なども含めた障害福祉従事者全体に配分できるように
- 上乗せ区分ができた:生産性向上・協働化に取り組むと、加算Ⅰロ・Ⅱロを算定できる
- 相談支援にも新設:計画相談・障害児相談・地域相談支援も対象に
加算が増えた分は、これまでの改善とは別に、新しく賃金改善に回す必要があります。また、4・5月分と6月以降分で区分が分かれているため、年度の途中で管理が複雑になりやすいのが今年度の特徴です。
年度中に記録するのは3つだけ
- 国保連からの支払:事業所ごと・月ごとの加算額
- 給与の支払:職員ごとの上乗せ額(手当・一時金)
- 突き合わせ:「加算額 ≦ 賃金改善額」になっているか
注意したいのは、サービス提供月と国保連の支払月が2か月ずれることです(3月提供分は5月支払)。
また、賃金改善額には、手当を増やしたことで増える社会保険料などの事業主負担分(法定福利費)も含められます。国のQ&Aでは、合理的な方法による概算でよいとされています。ただ、職員ごとに保険の加入状況が違うため、手作業だと意外と手間がかかるところです。
AIで管理するとよい5つのこと
1. 管理表のたたき台づくり
「放課後等デイサービスと計画相談支援を運営しています。処遇改善加算の管理表をExcelで作ってください。毎月の加算額、職員ごとの手当、法定福利費、突き合わせのシートを作り、入力するところは黄色に」——このように事業所の事情をそのまま伝えると、生成AIがたたき台を作ってくれます。
2. 4・5月分と6月以降分を分けた集計
今年度は区分が途中で変わるため、期間を分けて合計する必要があります。「4・5月と6月以降に分けて合計する式を作って」と頼めば、関数も作ってくれます。
3. 法定福利費の概算
「社保加入・40〜64歳」「雇用保険のみ」など、職員ごとの加入区分に合わせて率を掛ける計算は、AIに式を組んでもらうと早く済みます。ただし、保険料率そのものはAIに聞かず、協会けんぽや厚生労働省のホームページで確認した率を入れてください。
4. 不足額の早期発見
毎月突き合わせておけば、「このままだと年度末にいくら足りない」が早めにわかります。不足が見込まれても、3月までに一時金などで調整できます。
5. 様式のチェックと「誓約」の記録
鹿児島市の計画書・実績報告書の様式では、チェックリストに「×」が出ることがあります。様式の計算式をAIに読ませて意味を聞くと、どこを直せばいいかが早くわかります。
また、令和8年度は一部の要件を「誓約」で申請できるしくみがあり、令和9年3月末までに整備できていないと返還の対象になります。誓約した項目と実施日を一覧にしておくのも、AIで管理しやすいところです。
AIに任せてはいけないこと
便利なAIですが、使い方には注意が必要です。全国社会保険労務士会連合会の「社労士AI活用ガイドライン」も踏まえ、次の点を守ってください。
- 職員の氏名・マイナンバー・実際の給与額は入れない(「職員A」と架空の数字でたたき台を作る)
- 加算率や保険料率は、AIの答えをうのみにせず、通知や公式のホームページで確認する
- 合計の範囲や、在籍していない月が含まれていないかは、人の目で確認する
- 入力した内容が学習に使われない設定になっているかも確認する
あらた社会保険労務士オフィスでは、こう管理しています
あらた社会保険労務士オフィスでは、処遇改善加算を算定している顧問先について、AIを活用した管理表で年度中の数字を見える化しています。
- 顧問先ごとの事情(複数事業所の合算、兼務職員の扱いなど)に合わせて管理表を設計
- 国保連の決定額と給与の支払額を毎月突き合わせ、不足が見込まれれば早めにお知らせ
- 職員ごとの加入区分に合わせて法定福利費を計算
- 実績報告は、管理表から転記するだけの状態に
- AIには個人名や実際の給与を入れず、最終的な数字は社労士が元の資料で確認
また、処遇改善は「お金の計算」だけでは終わりません。社労士として、次のような点もあわせて確認しています。
- 手当を新設・変更したときの賃金規程の改定(常時10人以上の事業所は労働基準監督署への届出も)
- 毎月の処遇改善手当は残業代の計算の基礎に入るため、給与ソフトの設定を確認
- 手当の増額にともなう月額変更届、一時金を支払ったときの賞与支払届
- パート・有期の職員との待遇差の説明
まとめ
処遇改善加算は、年度末にまとめて集計しようとすると大変ですが、毎月3つの数字を記録しておけば、実績報告はほぼ転記で終わります。
AIは、管理表づくりや集計の式づくりで大きな味方になります。一方で、個人情報を入れない・数字は元の資料で確認する、というルールを守ることが大切です。
鹿児島市で処遇改善加算の管理にお困りの事業者様へ
あらた社会保険労務士オフィスは、鹿児島市を拠点に、医療・介護・福祉・保育の事業者様を専門に労務管理を支援しています。処遇改善加算については、次のようなご相談を承っています。
- 処遇改善手当の設計(配分のしかた・賃金テーブルづくり)
- 計画書・実績報告書の作成支援
- 年度中の管理表づくりと毎月の突き合わせ
- 賃金規程・就業規則の改定
- 給与ソフト・勤怠ソフトの設定確認
初回のご相談はお問い合わせフォームから承ります。鹿児島市内であれば、ご訪問しての打ち合わせも可能です。
本記事は、厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(令和8年3月31日)、「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(令和8年4月9日)、鹿児島市ホームページ「令和8年度福祉・介護職員等処遇改善加算」をもとに、令和8年10月時点の情報を整理したものです。個別の事案については、必ず原文と最新の情報をご確認ください。
